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緋色 1
2007-02-12 Mon 21:32

  『 暖冬といわれていますが、雪に閉ざされようとしています。

    雪見に来ませんか?
     …もう一度、緋色が見たい                   』

お正月開けの忙しさも一段落した頃届いた一通のメールに私は血の上った頬を押さえは、友人の言葉を思い出しました。

『陶芸教室? それがね 先生ったら自分の製作に打ち込んじゃって、この前の私達の作品展に負けちゃいられない、なんて冗談めかしているらしいんだけど、代わりに来ているお弟子さん達は、何かに憑かれた様で怖い位だって… 』

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一ヶ月以上もかかりきりでしたお仕事も後は契約を交わすだけとなった日、お相手の会社を出たのはお昼を少し過ぎた頃でした。 最後の確認などに時間が取られると思いオフィスにはもう戻らないと出かけてきた私は、明日からの週末と合わせて思いがけない自由な時間を手に入れたのです。 まずはお昼を…と思った私は、友人の陶芸教室の作品展がこの近くで行われていること、フリーランスで働いている彼女は、平日は割と受付にいるという話を思い出しました。 お昼でも一緒にと思い連絡を取ってみましたが、すでに済ませているそうで、ギャラリーの詳しい場所を尋ね、そのついでに勧められた近くのイタリアンレストランへと向かったのです。
友人がお気に入りというだけあって心地良い雰囲気のお店、パスタとサラダ、それに気を張りつめていたお仕事も一段落と言う事で、私は自分への御褒美としてよく冷えた辛口の白のグラスワインをいただき、すっかりリラックスしてしまいました。

レストランからギャラリーのあるビルまでは歩いて5分程、エレベーターホールでボタンを押す前に軽やかな音を立てて開いたエレベーターに、わたくしは何も考えずに滑り込んだのです。 

『何階ですか?』
お昼にいただいたアルコールにすっかり寛いでいた私の耳に、よく響くバリトンが飛び込んできたのです。
『…5階を…お願いします…』
平日のこの時間に他の方が乗っていらっしゃるのは当たり前のはずなのに、ギャラリーのある階を答えた声は驚きに震えていたでしょう。 声のするほうを振り向くといくつかの灯りの点いた操作盤の前には40代後半かと思われるざっくりとしたセーターと穿き慣れたジーンズに身を包んだ大柄な男性が手を伸ばしておられました。
普段であれば馴染みのないビルで見知らぬ方と二人っきりの密室は気詰まりなものですが、ガラスから差し込む小春日和の日差しと、お昼にいただいたアルコールの酔いに身を委ねた私は、前にいらっしゃる男性よりも趣味の会を訪れるにはお仕事重視の己の装いが気になりはじめておりました。 打ち合わせの折などはセーターにスカート、現場に出るときなどはパンツスーツなどカジュアルな装いの私も、さすがに今日は、あちらの上司の方にもお目にかかる事もあり、シルバーサテンのシャツブラウスを第一ボタンまできっちり留め、その上にチャーコールグレーのロングジャケット、あまり堅苦しく見えないようにと纏った同色のプリーツスカートからはナチュラルストッキングのふくらはぎが覗くというオフィシャルな装いでした。

着替えに戻るには遅すぎ、せめてもとシャツの第一ボタン、ガラス越しの日差しの暖かさに誘われ二つ目のボタンも外した私は、ファサッ… 緩く纏めた髪のピンを抜き去り、栗色の柔らかな流れを背に落としたのです。
『ぁっ…』
纏めていた癖が残らない柔らかな髪を、指を差し込んで梳こうと下を向いた瞳に飛び込んだのは鮮やかなスカーレットのバラでした。 
普段のお仕事の時はライトブルーやシャンパンゴールドなどアウターに響かない静かな色の下着を身に着けておりますが、ここは!と言う時には仕事への高揚感なのでしょうか、それとも己を鼓舞するためでしょうか、いつの間にか赤を身に纏う様になっていたのです。 そんな私が今日選んだのは、スカーレットのバラを織り上げたレースのブラ、小春日和とはいえ忍び寄る秋の風を用心して対のレースのショーツとガーターベルト。そして、地模様にバラを浮き上がらせた同色のシルクサテンの揃いのスリップでした。

白い豊かな胸に咲いた鮮やかなスカーレットのバラ、その淫ら過ぎる姿に、慌てて二つ目のボタンを留めなおしながら、急に見知らぬ男性と二人っきりということが意識されてきたのです。
見られたかしら?…
そんなはずは無いと思いつつそっと盗み見た男性はまっすぐ扉の上の表示階をを見つめている様で、私は安堵の息をそっと吐きました。

チン、軽やかな音を立てて5階の扉が開きました。
『どうぞ』
操作盤の前で開ボタンを押した男性が声をかけてくださいました。
『ありがとうございます』
私は内心の動揺を押し隠して小さく頭を下げ、正面にしつらえられた受付へと近づいたのです。





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